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賃貸業界でDXにどう取り組むべきか。

  • 執筆者の写真: 深澤 成嘉
    深澤 成嘉
  • 2023年8月22日
  • 読了時間: 6分

更新日:2023年10月9日


DXのイメージ(ミーティングイメージ)




 DXという言葉がビジネスシーンにおいて注目を集めている。


 このDX(デジタルトランスフォーメーション)は、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマンという大学教授が考えた言葉である。実は20年も前の話なのである。


 DXとはデジタルによる変革であり、デジタル化(デジタライゼーションやデジタイゼーション)とは違い、「変革」することにある。


 ストルターマンが考えたのは、「IT(情報技術)の浸透が、人々の生活をあらゆる面で良い方向に変革させる」という意味であったが、「ITの浸透によってビジネスを良い方向に変革させる」というのがビジネスにおけるDXの本質ではないだろうか。


 アナログをデジタルに置き換えるだけではなく、デジタルを使い良い方向に変化させることであり、デジタルをより良いデジタルに置き換えることも含まれるはずである。




 DXの前に、まずはアナログとデジタルの違いについて触れてみよう。


 「アナログ」と「デジタル」の違いは、信号の違い。デジタルは、一定の数値ではっきりと区切りをつけるため、「あるか/ないか」「マルかバツか」といったように、中間部分を省いた状態で情報を表す。

 一方で、アナログは常に変動している情報をそのまま表すことができるため、元の情報を本来のかたちに近い状態で表現することができる。


 間違えてはいけないのは、デジタルがアナログより優れている部分は多いが、情報の表現力などにおいてアナログが優れている部分もあるということ。

 ここをきちんと見極めないと、デジタル化することでクオリティが下がってしまうことになりかねない。


 「あるか/ないか」「マルかバツか」や、「数字」、「日付」、「テキスト」といったものはデジタルで再現されやすい。これらをデータベースに格納することで、見えてくることがあるはずである。

 今まで、現場で多忙に働いていたため見落としていた消費者の傾向が、見えてくるとそこに注力することもできそうである。


 また、ChatGPTなどの生成AIで画像や動画、記事などのデジタルの精度が上がればアナログに近づくことができる。

 今までプロに頼まなければ表現しきれなかったWEBサイトや広告なども担当者がいとも簡単に作れてしまう時代が来ている。

 しかし、すでに人間が違いを感知できないレベルまで来ているが、人間の五感だけでなく感情に訴えるものについてはまだだろう。

 

 営業担当者のすごく気の利いた対応や、美しい言葉づかい、落ち着いた物腰やその場の雰囲気などの演出は、デジタルでは再現できない貴重で満足度の高い体験を顧客にもたらせることができる。

 「仕事」をデジタル化するためには、その「仕事」がデジタル化されやすいものなのか、アナログでしか再現できないものなのかを仕分けする必要がある。

 みなさんの仕事でどれがデジタル化すべきか、どのようにデジタル化すれば良いかわからないということがあれば、ぜひ相談してほしい。



DXのイメージ



 話をDXに戻すが、「ITの浸透によってビジネスを良い方向に変革させる」というのがビジネスにおけるDXの本質だと述べた。

 当然、目的は「良い方向に変革させる」ことである。

エリック・ストルターマンがDXという言葉を考えた2004年からすると、20年後の未来である現在は、ある程度DXがなされた時代のはずである。


 ChatGPTなどの生成AIが流行っているが、それ以前にもテスラの自動運転や、紙の地図からカーナビへの変化を一気に人間が持ち歩くものへと加速したGoogleMap、世界中の人々とつながるSNSや、さまざまなデジタル技術をを民主化したスマートフォンやスマートウォッチ、コロナ禍でビジネスシーンを大きく変えたZoomなども人々の生活を大きく良い方向に変革させることができたと言える。



ForLeaseの画像



 さて問題はこの不動産業界である。

 不動産業界のDXは大きく遅れていると言われている。業界をとりまく不動産テック企業のみなさんが、必死に未来を良くしようと頑張ってくれているのだが、なかなか進んでいかないというのが現状のようである。

 決して彼らや不動産会社が良くないわけではなく、古くからある産業としての不動産業界は、複雑なスキームを人材力でカバーしている部分も多いため、なかなかうまく事が運べないというのが本音だろう。


 私は賃貸管理業における電子契約の実現をはじめ、いくつかの不動産DX、賃貸DXの導入にかかわった経験や、それ以降の業界内外の皆様との意見交換を通じてこの現状を以下のように理解している。


1、DXについての本質的な理解がされにくい

2、アナログとデジタルの違いが理解できていない

3、10年後20年後のDXされた不動産業界のビジョンが作れない

4、ものづくりや変革が苦手な業界である

5、煩雑な作業を好み、そのために人材採用をし続けている


 個々の内容については別で書くことにするが、これらがDXを遅らせていると感じてしまう。


 とはいえ、DXによって不動産ビジネスや賃貸管理業界が良くなると期待する方も多い。

 不動産テックの方々はじめ、優秀な不動産業界のみなさんが大いに注目しているのはこの期待からだろう。

 また、煩雑な業務をデジタル化し、そのデータを分析しアウトプットすることで、従来感覚的に行っていた業務がもっと良くなるのではないかと感じている方も多い。

 さらに、業務を自動化させることで生産性が上がり、利益率が高くなったり、ビジネスのスピードが上がる、働き方が変わる、顧客満足が上がるといった期待もある。


 しかし、DXしたいという経営者の目的が、いつの間にか業務効率化にすり替えられ、それがFAXや郵送を無くす、電話を無くす、Excelを無くすという少し安易な方向に向かうという事例は枚挙にいとまない。

 

 これはDXという変革ではなく、単なるデジタル化である。

 デジタル化自体は良いことではあるが、DXがされないデジタル化になっていないかよく考える必要がある。

「ITの浸透によってビジネスを良い方向に変革させる」になっているのかどうか、である。




 アナログとデジタルの違いの部分で触れたが、そもそもデジタルとアナログは異なるものであって、決してアナログの進化系がデジタルではない。

 むしろデジタルの目指すものが、いかにアナログ的で感情に訴える要素をより多く内包し、人の思考に近づくことができるか、AIなどが目指す答えはアナログとデジタルを高度に融合させることなのかもしれない。


 大事なことは、DXを推進するがために、なんでもデジタル化、システム化することなく、人の持つ経験値や感情などアナログの良さを共有知としてデータベース化し、いかにアナログ的感覚を残しながら、業態自体を変革させるかではないだろうか。


 こういったことを、きわめて冷静に分析し、デジタルで進むべき事柄をいかに「ITの浸透によってビジネスを良い方向に変革させる」という方向に進ませるかを考えることが不動産業界におけるDX推進の第一歩であると考えている。


 これについて、ご意見、ご相談等あれば、ぜひ一度、コンタクトを取っていただきたい。



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